頑丈なネット証券
彼らは経営については熟知しているはずですから、ウォール街で自分達のことを「超空の覇者(masters of universe)」だとか「巨大なイチモツ(big swinging dicks : BSDs)」だとか呼んで悦に入っている敵対的買収の専門家達が持っている自信過剰よりは、小さいものだと言えるでしょう。
前に「株主価値」という言葉が、ストックオプションを使って経営幹部をいかにうまく使うか、ということをお話ししました。
先ほどのBSDたちは、より巧妙に、自らの取引を正当化するためにこの言葉を偽善的に使用します。
偽善的であるという理由は、株主が「価値」を享受できるのは、買い手に持ち株を売却したときだけであるからです。
つまり、株主であることをやめて初めて、恩恵を受けられるということです。
さらに言えば、財務目的の買い手は、経営にその素晴らしい手腕を発揮したから利益を得ているわけではありません。
単に「以前は旧株主に帰属していた」資産を売りさばいただけなのです。
今日のBSDたち、またはプライベートエクイティはさらに、売却まで待つことなく、 「マネジメントフィー」や配当などで、買収後すぐに甘い汁を吸い出します。
財務目的の買収の全てが敵対的買収であるわけではありません。
しかし、敵対的副文には、それが敵対的になる理由があるものです。
敵対的買収は、実際の経営に支障を与えます。
だいたい、敵対的買収を「恐れる」ことすら、経営の邪魔になります。
ですが、経営陣はもっと重要なことに注視すべきです1980年代の終わり、米国がその技術力を大きく失い、日本が車両・鉄鋼・半導体その他の産業でトップに立ったのは、米国を飲み込んだM&Aの波との偶然の一致ではないのです。
最近私は、 M&Aに関する本を日本から取り寄せたのですが、とても不安になってしまいました。
どこを探しても、シスコやその他の戦略的M&Aの最高峰と言われる取引例が出てきません。
一方で1980年代に米国で流行した「シヤーク・リペレント」などといった敵対的買収用語が乱発されています。
現代日本の若手サラリーマンの多くが、 M&A取引を「カッコイイ」と思っている、ということを耳にして、私の不安はますます募りました。
これは、自信過剰と盲目的追従の再来のような気がします。
この手の流行語に偏されてはいけません。
さもなくば、日本が馬鹿げた取引にかまけている間に、その地位を中国や、インドや、または韓国に持っていかれてしまいますよ。
重要なことは、合理的な戦略的取引にのみ、集中することです。
もちろん、その前に、 M&A取引がどんなふうに行われているかを知らねばなりません。
次節は、この点についてお話しいたします。
前節では、なぜ人々がM&A取引を行うか、その理由についてお話ししました。
今回は、取引の構造に焦点を当てたいと思います。
ご存知の通り、2006年5月及び2007年5月に改正された商法のお陰で、 M&A取引の構築がより柔軟にできるようになりました。
今回、米国と日本両方に適用される基本概念についてお話ししていきますが、より長い歴史を持つ米国のM&A取引について重点が置かれがちになることをお許しください。
また、日本国内の取引に関して詳細なアドバイスが必要な場合は、どうぞ日本の弁護士にご相談ください。
「吸収合併と買収」という言葉には、二つの異なる取引が示されています。
もっとも、法律的には異なりますが、ビジネス概念上は多くの場合、それら二つは密接に関係している場合がほとんどです。
このことを見ていくうえで、まずは、シンプルな買収取引の構造からスタートしましょう。
そこには「株式買収」と「資産買収」という、二つの基本手法が存在します。
買収社A社は、買収対象であるT社の株主に金銭を支払い、彼らが保有する株式を手に入れました。
ここでは仮に、 A社はT社の発行済株式数の100%を買収したとしましよう。
この取引では、最終的にT社はA社の子会社となります。
ということはつまり、この取引が発生する以前からT社が持っていた資産も負債も、最終的にA社に保有される、ということです。
T社の旧株主の手には、現金のみが残ります。
ときに買収側は、金銭の代わりに、自らの株式を一種の「貨幣」として使用することがあります。
このような取引は「株式スワップ」と呼ばれます。
通常は、買収側が公開企業の場合、かつ、株価が高い場合にこの手法が使われます。
このようなケースでは、 T社の旧株主は、取引の結果A社の株主になります。
一見単純に見えますが、これらの取引には、その実行に大きなハードルが隠されています。
まず問題は、どうやったらA社がT社の株主全員に接触できるか、ということです。
もしT社が未公開企業であれば、 A社はとりあえず、何名かのキーとなる株主に接触をし、彼らの株式を買いたいと持ちかけるでしょう。
そして次に、その他の株主に売却を持ちかけるのではないでしょうか。
従業員などの持株比率の低い株主が多く存在する場合は、 A社はもしかしたら、公式な情報開示書か目論見書を作成し、取引説明のために彼らに送るかもしれません。
情報開示書の内容は、その地方の証券業法に準拠します。
もしT社が公開企業であれば、 A社はまずは、市場でT社株式を入手しようとするかもしれません。
ということは、お金さえたっぷり持っていれば、トヨタとかGE株を市場で全て購入することができるのでしょうか?答えは、おそらくNOです。
政府による規制と独占禁止法が、この手を阻みます。
それに、経営陣が保有する株式の大半は、実際には未発行であることが多いものです。
例えば、従業員や経営陣が持つストック・オプションが未行使だという場合などがこれにあたります。
それらを踏まえ、 A社はおそらく、公開買付(TOB)、もしくは米国で「テンダー・オファー(tenderoffer)」と呼ばれるテクニックを検討することでしょう。
これは、 A社がT社の株主に対して公に、ある期日までに持株をA社に譲ってほしい、引き換えに金銭またはA社株式を与える、という通知を出す方法です。
少なくとも米国では、ほとんどのTOB取引はT社取締役会の承認を得た「友好的」なものになっています。
A社の選択肢には、もうひとつ、 T社の新規発行株式を取得する、という方法もあります。
このような場合、 A社は対価をT社に直接支払います。
しかし、 T社が外部株主を持たない起業間もない会社でない限り、このテクニックだけでT社の全株式を入手することは不可能です。
これは、資産買収を表したものです。
ここで私は米国の用語を使っております。
日本の法律では、もしA社が資産のみならずT社の従業員も受け取った場合は、その取引は「営業譲渡」と呼ばれるようですが、ここではこれらの分類を無視します。
この場合、一般的に対価は現金となります。
稀ではありますが、 A社がT社に対して新株を発行することもあります。
資産買収と株式買収の間に、重要な違いがあるのに気がつきましたか?まず、資産買収の場合A社は、対価を株主にではなく、 T社という会社に支払っています。
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